臨床研究の種類について
人を対象とした医学研究を臨床研究といい、臨床研究の中で薬剤や治療法、診断法などの安全性と有効性を評価するための研究を臨床試験という。医学、例えば治療や診断法の科学的根拠を示す医学エビデンスを明らかにするための研究は、単純な効果ある・なしではなく、信頼性や医療における再現性の観点から下記に分けられる。
ランダム化(無作為)比較試験
対象者を無作為に2群に分けて、一方には従来の治療法や偽薬(プラセボ)を投与し、もう一方には新規治療法を行い、新規治療法の効果を比較する試験。医師、または患者の先入観等による影響を無くすために被験者がどの治療群に割り付けられたかを医師も被験者も知らないようにして実施する二重盲検ランダム化比較試験や、医師のみ割り付けの中身を知っている単盲検ランダム化比較試験、医師、患者ともに割り付けの中身を知っているオープン試験などがある。比較試験としては、二重盲検ランダム化比較試験、単盲検ランダム化比較試験、オープン試験の順で質が高いとされる。ランダム化により、検証したい方法以外の要因がバランスよく分かれるため公平に比較することができるとされる。
投薬する薬が新薬か偽薬かについて
非ランダム化(非無作為化)比較試験
対象者の割り付けを無作為に行わない試験。
コホート研究
病気の予防法等を見つけるために、ある集団に対して、長期間(数年から数10年)にわたり追跡調査を行い、病気の原因となる可能性のある要因(生活習慣など)と病気の発生状況の関連性を調べる研究。
症例対照研究
研究の対象とする病気の患者群とそうではない対照群を設定し、それぞれについて、病気の原因と考えられる要因への暴露状況を、過去にさかのぼって調べ、比較する研究。後ろ向き研究、あるいは後方視的研究ともいう。
症例報告
治療の有効性が確認できた1人、もしくは複数名の症例を、カルテの情報をもとに整理して報告したもの。患者背景などの条件が揃っておらず、また母集団も少ないため、信頼性や再現性は高くない。