研究用語辞典

紅麹の健康効果

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の製品・食品の効果を保証するものではありません。本研究成果も限られた条件下での成果であり、特定の製品・食品を摂っても、同じ効果が得られるというものではありません。

紅麹は、紅麹菌(Monascus sp.)を蒸米に生育させた麹の一種。麹とは、米や麦、大豆などの穀物にカビの1種の微生物である「麹菌」を付着させて培養したもので、東アジア、東南アジアでは古くから発酵食品の製造に利用されてきた。日本では味噌、醤油、酒などの製造に、主に黄麹、黒麹、白麹といった種類が使われてきたが、紅麹は、台湾や中国、沖縄などで発酵食品、醸造食品製造に使われてきた歴史がある。
16世紀に書かれた中国の医学書である”本草綱目”には、紅麹の効能として血液循環の改善、消化促進、脾臓機能の活性化、下痢、打ち身や怪我の治癒、血液の健康増進、出産直後の女性を瘀血から守る、などが記載されており、当時から薬用食品として珍重されてきたことが伺える。

紅麹の主な健康成分

紅麹からは、以下のような健康増進に寄与する成分が発見され、実際にコレステロール降下剤、健康食品等にも利用されている。

紅麹
  • モナコリンK:血液中のLDLコレステロール(悪玉コテステロール)低下作用。肝臓のコレステロール合成に関わるHMG-CoA 還元酵素を阻害することで、コレステロールの合成を抑制する。コレステロール降下剤としても利用されている。‘
  • GABA:血圧上昇抑制、血圧調整作用
  • ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害ペプチド:血圧上昇抑制、血圧調整作用
  • ジメルム酸:抗酸化活性
  • フェノール酸:抗酸化活性
  • 紅麹菌を用いて米ぬかを発酵させると、フェノール酸が増加して抗酸化活性が高まることが報告されている。
  • モナスカス色素:抗菌作用
参考文献
  • 北本勝ひこ,春田伸,丸山潤一,後藤慶一,尾花望,齋藤勝晴:食と微生物の辞典. 朝倉書店, 2017. p4-59
  • Hiroyuki Fukami et al. A Review of Red Yeast Rice, a Traditional Fermented Food in Japan and East Asia: Its Characteristic Ingredients and Application in the Maintenance and Improvement of Health in Lipid Metabolism and the Circulatory System. Molecules.2021Mar 15;26(6)

小林製薬研究員からひとこと

紅麹菌の中には人への健康被害があるカビ毒(シトリニン)を生産するものがあり、欧州委員会規則(EC)においては、紅麹由来のサプリメント中のシトリニンの基準値を100μg/kg以下と規制しています。小林製薬では、次世代シークエンサーを使って紅麹菌3種類の全ゲノム解析を行い、紅麹菌の1菌株であるM.pilosus NBRC 4520には腎毒性の健康被害をもたらすカビ毒シトリニンが生成不能であることを明らかにしました。