素材研究

紅麹③-1紅麹:ゲノム解析によるカビ毒シトリニン生成不能の証明

紅麹

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の製品・食品の効果を保証するものではありません。本研究成果も限られた条件下での成果であり、特定の製品・食品を摂っても、同じ効果が得られるというものではありません。

紅麹③:安全性に関する研究

1.ゲノム解析によるカビ毒シトリニン生成不能の証明

【研究1】全ゲノム解析によるM. pilosusのカビ毒シトリニン生成不能の証明

概要

“紅麹”は米などの穀類にMonascus属糸状菌を繁殖させた鮮紅色の麹で、食用色素や健康食品として広く利用されています。しかしその一方で、紅麹菌の中には、人体への腎毒性の健康被害が有るカビ毒を生産するものが存在することから、欧州委員会規制(EC)において紅麹由来のサプリメント中のシトリニンの基準値が100μg/kg以下に規制されているなど、安全性についての懸念が払拭されていないのが現状です。そこで今回、日本、台湾、中国において食品用途に主に使用されている紅麹菌3種(M. pilosus(日本)、 M. purpureus(中国)、M. ruber(台湾))について、次世代シークエンサー※を使った全ゲノム解析を行い、シトリニンの産生能について検証したところM pilosus NBRC 4520には腎毒性の健康被害をもたらすカビ毒シトリニンが生成不能であることが明らかになりました。

※ 次世代シークエンサー:大規模な遺伝子配列を解明するため活用される基盤技術。数千から数百万ものDNA分子を同時に配列決定可能。

試験方法

本研究で使用した菌種
M.purpureus 中国本土
M.pilosus 日本
M.ruber 台湾
生成物解析
①紅麹菌の培養
②生成物の抽出
③データ取得と解析
ゲノム解析
①紅麹菌の培養
②遺伝子抽出
③データ取得と解析

結果

M. purpureus NBRC 4478の培養物からは、シトリニンが検出されましたが、M. pilosus NBRC 4520およびM. ruber NBRC 4483の培養物からはシトリニンは検出されませんでした。
M. purpureus NBRC 4478は、シトリニン生合成遺伝子群を有していましたが、M. pilosus NBRC 4520、M. ruber NBRC 4483は、シトリニン生合成遺伝子群を有していませんでした。

紅麹培養物のヒートマップ
シトリニンが生成されていない
カビ毒シトリニンを合成する遺伝子領域

考察

日本で主に利用されている紅麹菌M. pilosusは、物質レベルでシトリニンを生成せず、ゲノムにもシトリニン産生遺伝子が存在しないことが確認されました。一方、中国で主に利用されている紅麹菌M. purpureusでは、シトリニンの産生およびシトリニン産生遺伝子の存在が確認されました。台湾で主に利用されているM. ruber に関しては、今回の研究で用いた菌株ではシトリニンを作る遺伝子は存在していませんでしたが、M. purpureusM. ruberは過去にシトリニンの遺伝子が機能している菌株の報告があります(Shimizu et al., 2005 and Wang et al., 2016)。
以上のことから、紅麹菌M. pilosus NBRC 4520は、ゲノムレベルでカビ毒シトリニンを作らない報告のある紅麹菌として、高い安全性を持つ、有用な食品利用菌種であると考えられます。

発表先

【学会発表, 口頭】比嘉悠貴, 紅麹菌3種の比較ゲノム解析から明らかになったMonascus pilosus NBRC 4520の食品応用有用性について, 日本農芸化学会, 2019/3/27.
比嘉悠貴, 二次代謝遺伝子群に注目した紅麹菌の比較ゲノム解析, 第26回 日本食品化学学会, 2020/5/28.
【論文(査読アリ)報告】Y. Higa et al. (2020). Divergence of metabolites in three phylogenetically close Monascus species (M. pilosus, M. ruber, and M. purpureus) based on secondary metabolite biosynthetic gene clusters. BMC Genomics, 21, 679.

学術情報

①血中脂質・コレステロールに関する研究

②薬理と成分に関する研究

③安全性に関する研究

④美味しさに関する研究

研究素材の紹介

用語の解説:
  1. 紅麹

研究素材の紹介