紅麹④:美味しさに関する研究
1.「紅塩麴」の味の特徴と成分分析
【研究1】“紅麹”を混合醸造した“紅塩麹”の味の特徴と成分分析
概要
“紅麹”は米などの穀類にモナスカス属糸状菌を繁殖させた鮮紅色の麹で、味噌、醤油、食酢、酒類等の醸造食品をはじめ、様々な食品用途に使われています。本研究は、紅麹が持つ味の特徴を明らかとするため、“紅麹”と“黄麹”で混合醸造した“紅塩麹”と、“黄麹”のみで作製した従来の“塩麹”との味の違いを味覚センサーを用いて分析し、その違いを生み出す成分変化を検証しました。その結果、紅塩麴は塩麴以上に強い旨味増強作用があることが示唆されました。
試験方法
“紅塩麹”は“塩麹”の一般的なレシピである、「麹と食塩と水とを混合して30℃に保温し、1日1回かき混ぜて10日から20日間継続保温する」という方法で、“黄麹”と“紅麹”の混合割合および食塩の割合を変えたサンプルを作製しました。出来上がった“紅塩麹”ならびに“塩麹”は味覚センサーを用い味の特徴を分析、また味の特徴に起因する成分であるタンパク質分解酵素活性(酸性プロテアーゼ活性)ならびに総アミノ酸量を測定しました。
結果
味覚センサーによる分析結果では、“紅塩麹”は“塩麹”に比べ旨味や甘味が強く、酸味が弱いことがわかりました。成分分析では、タンパク質分解酵素活性、総アミノ酸量ともに、紅塩麴は塩麴より高く、醸造条件別に見ると、紅麹の混合割合が多いほどタンパク質分解酵素活性が増加、塩分が少なく紅麹の培養日数が長いほど総アミノ酸量は増加していました。
考察
紅塩麹は、紅麹が旨味成分(アミノ酸、ペプチド、核酸など)を生成する一方で、酸をあまり生成しないことで、強い旨味増強作用を発揮しているものと考えられました。また、強い旨味やペプチドの作用による、酸味の緩衝作用がある可能性が示唆されました。紅塩麴には、素材の味を邪魔せず、うまみを引き出し、まろやかな味わいにする効果があると考えられます。
発表先
【学会報告, 口頭】浅野幸一, 深見裕之, 紅麹(Monascus pilosus)を混合醸造した塩麹(紅塩麹)の成分と味の特性, 第73回日本栄養・食糧学会大会, 2019.05.19
学術情報
①血中脂質・コレステロールに関する研究
②薬理と成分に関する研究
③安全性に関する研究
④美味しさに関する研究
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