素材研究

紅麹

紅麹

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の製品・食品の効果を保証するものではありません。本研究成果も限られた条件下での成果であり、特定の製品・食品を摂っても、同じ効果が得られるというものではありません。

学術情報

①血中脂質・コレステロールに関する研究

②薬理と成分に関する研究

③安全性に関する研究

④美味しさに関する研究

素材情報:紅麹とは?

麹は、米、麦、大豆などの穀類に、食品の発酵に有用なカビを繁殖させたもので、日本では古くから、味噌や醤油、食酢、味醂、日本酒、焼酎、泡盛などの発酵食品の製造に利用されています。

麹づくりに利用される麹菌にはさまざまな種類があり、たとえば味噌、醤油、味醂、日本酒には黄麹菌(Aspergillus oryzae)、泡盛には黒麹菌(Aspergillus luchuensis)、焼酎には黒麹菌、白麹菌(Aspergillus kawachii)などが使われています。

紅麹はこうした麹菌の一種である紅麹菌(ベニコウジカビ/Monascus属カビ)を米に植菌して発酵させたもので、沖縄の伝統食品である豆腐ようの製造などに用いられ、鮮やかな紅色が特徴です。

紅麹菌の顕微鏡写真
沖縄に古くから伝わる発酵食品「豆腐よう」
沖縄に古くから伝わる発酵食品「豆腐よう」

■中国の伝統的薬学書に記載される紅麹

紅麹米はアジアにおいて何世紀にもわたり食用色素、調味料、肉類の保存料、醸造原料として用いられてきました。紅麹は中国が起源とされ、呉端の著書「日用本草」(1329年)に薬膳料理として登場します。
古来より、中国では植物、動物、鉱物など自然の力を薬として健康に役立てようとする「本草」学という学問があり、その集大成と言える明時代の書物『本草綱目』に、紅麹は「主に消化を良くし、血液の流れを促進し、脾臓や胃の機能を改善する」と記載されています。また「気力を回復し、外傷にも効き、婦人病や産後の肥立ちにも効き目がある」とも書かれ、さまざまな効能があると考えられていたようです。
近年、紅麹の健康効果に関する研究が進められ、降圧効果、血中脂質低減作用、認知機能改善作用、抗酸化作用など、様々な効果が報告されており、健康食品としての活用が期待されます。

血液の健康に役立つ有用成分「米紅麹ポリケチド」

紅麹に含まれる有用成分「米紅麹ポリケチド」は、お米を紅麹菌によって発酵させることで作られるポリケチド類の総称で、血中のLDL(悪玉)コレステロールを下げる作用が確認されており、機能性関与成分として用いられることもあります。「米紅麹ポリケチド」には様々な成分が含まれていますが、中でも薬理活性物質モナコリンK(Monacolin K)は、米国で承認されている高コレステロール血症治療薬ロバスタチンと同じ構造を持ち、体内でコレステロールの合成を阻害する働きがあることから、高コレステロール血症の改善といった高脂血症薬と同じ作用を示すことが知られています。「米紅麹ポリケチド」には他にも、抗酸化作用などを持つアザフィロン色素(モナスシン、モナスシノール、ルブロパンクタミンなど)が数種分離同定されており、これらの多様な成分が複合的に働くことが、血液の健康に有用であると考えられています。

米紅麹ポリケチド(

モナコリンK
アザフィロン色素

■紅麹は肝臓でのコレステロール合成を抑制する

体内のコレステロールのうち、7~8割は主に肝臓で合成され、食事から取り込まれる食事性コレステロールは残りの2~3割程度です(1)。
機能性関与成分として用いられることもある米紅麹ポリケチドは、肝臓でのコレステロール合成に関わるHMG-CoA 還元酵素を阻害することで、肝臓でのコレステロールの合成を抑制します。肝臓中のコレステロール濃度が低下すると、肝臓の LDL 受容体活性が高まり血液中の LDL の肝臓への取り込みが促進されるため、血中 LDL コレステロール値が低下するのです(2)。

(1) 厚生労働省. “コレステロール”. e-ヘルスネット. 2019-6-12.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-012.html, (参照 2021-10-19)
(2) A Endo (1992). The discovery and development of HMG-CoA reductase inhibitors. Journal of Lipid Research, 33(11), 1569-1582.

肝臓で合成(7~8割)
食事(2~3割)
体内のコレステロール

コレステロール合成経路
通常時
アセチル-CoA
HMG-CoA
メバロン酸
コレステロール

紅麹摂取時
アセチル‐CoA
HMG-CoA
米紅麹ポリケチド
HMG-CoA還元酵素
メバロン酸
コレステロール
取り込み促進(合成抑制)
血中LDLコレステロール値が低下

■安全性の高い菌種 M. pilosusを使用

小林製薬では、複数ある紅麹菌の中でもMonascus pilosusという菌種を使用しています。
モナコリンKを産生する紅麹菌の一部の菌株は、人体への腎毒性の健康被害が有るカビ毒であるシトリニンを産生する場合があるとして、欧州食品安全機関(EFSA)では紅麹由来のサプリメント中のシトリニンの基準値が2,000μg/kg以下に規制されています。
M.pilosus NBRC4520 について、培養物を分析したところ、シトリニンは検出されませんでした。さらに次世代シークエンサーを使った全ゲノム解析を行ったところ、シトリニンを生成する遺伝子は機能しておらず、遺伝子レベルでカビ毒シトリニンが生成不能であることが証明されました(3)。

(3) Y. Higa et al. (2020). Divergence of metabolites in three phylogenetically close Monascus species (M. pilosus, M. ruber, and M. purpureus) based on secondary metabolite biosynthetic gene clusters. BMC Genomics, 21, 679.

■伝統的な固体培養法による発酵を採用

紅麹菌の培養には、古来伝統的な紅麹菌を米に植菌して繁殖させる「固体培養法」と、産業用途に近年開発された液体培地で麹菌を繁殖させる効率重視の「液体培養法」があります。液体培養法では1週間程度の短期間で麹菌が育てられるのに対し、固体培養法では40~50日の長い期間をかけて発酵を行います。
小林製薬では、この伝統的固体培養法にこだわって紅麹を作り、使用しています。その理由の一つは、多様で豊富な有用成分を得るためです。液体培養は、色素など特定の成分を得るために調整された製法であるため、得られる成分の種類が限られています。対して固体培養では、米紅麹ポリケチド(モナコリンK、モナスシン、モナスシノール、ルブロパンクタミンなど)やGABA、モナスカミック酸などの有用成分の多くが発酵時間の経過とともに増加することがわかっています。また、強いコレステロール低下作用を持つモナコリンKは、固体培養での生産量が液体培養での生産量の数倍から10倍であることが知られています。 (1) つまり、固体培養法の採用によって、より有用成分含有量の多い紅麹原料を得ることが期待されるためです。
そして、もう一つの理由は安全性の確保のためです。サプリメントの場合、安全性の証明として食歴(歴史的に安全に食べられてきた経験)が重視されます。液体培養法の場合、成分の高度な濃縮が起こるため、安全性には不安が残ります。一方、固体培養法で作られた紅麹は濃縮が起こらず、食歴のある本来の「紅麹」と同等であるため、安全性が証明されていると考えられるからです。同様の考えから、小林製薬では培養後の後加工による成分の抽出や濃縮(エキス化)も行わず、従来の紅麹に近い状態で使用しています。

(4) Qinyou Wen et al. (2020). An overview of Monascus fermentation processes for monacolin K production. Open Chemistry, 18, 10-21.

紅麹の個体培養法と液体培養法の違い
個体培養法
米紅麹
発酵期間:約40~50日
製法:古来の伝統製法
濃縮過程:濃縮なし
食歴:あり
成分:多様で豊富

紅麹エキス
発酵期間:約40~50日
製法:古来の伝統製法
濃縮過程:濃縮あり
食歴:なし
成分:特定の成分に特化

液体培養法
発酵期間:約7日
製法:産業効率を重視
濃縮過程:濃縮あり
食歴:なし
成分:特定の成分に特化
発酵の時間経過に伴う形態、色調の変化
全培養期間43日

培養期間43日
生紅麹を時間経過とともにサンプリング、紅麹米の中に生成される機能成分や色素成分などを分析し、経時的に見える化した。
発酵の時間経過に伴う代謝物産生の様子(イメージ図)
GABA
モナスカミック酸
ルブロパンクタミン
モナスシノール
モナコリンK(ラクトン型)
モナコリンK(酸型)
モナスシン

培養日数(日)
図は、成分ごとに最高値を100とした比率のグラフを描き、各成分のカーブが重ならいよう分析値を適宜乗算して作成した。

ニュースリリース

  • 2021.10.15「紅麹」に関する研究結果を公開しました。

学術情報

①血中脂質・コレステロールに関する研究

②薬理と成分に関する研究

③安全性に関する研究

④美味しさに関する研究