研究用語辞典

麹菌の健康効果

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の製品・食品の効果を保証するものではありません。本研究成果も限られた条件下での成果であり、特定の製品・食品を摂っても、同じ効果が得られるというものではありません。

麹菌とは

麹菌は微生物の1種(カビ)で、日本の食文化に深く根付いて多くの伝統的な発酵食品に用いられてきた歴史がある。日本を代表する微生物として「国菌」に認定されており、代表的な麹菌としては黄麹菌、白麹菌、黒麹菌がある。黄麹菌(Aspergillus oryzae)は古く6世紀に利用されていた記録が残っており、清酒、醤油、味噌、米酢などの発酵食品の製造に利用されてきた。黒麹菌(Aspergillus luchuensis)は黄麹菌と近縁だが、分生子(胞子)が黒色のためこの名前で呼ばれる。クエン酸を産生する能力が高く、雑菌の繁殖を防ぐため、高温多湿で雑菌が繁殖しやすい九州地域での焼酎製造などに用いられてきた。その後、黒麹菌の変異体である白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. Kawachii)が見出されたことで、製造時に汚れの付着が少ない使い勝手の良さから、焼酎製造で広く使われてきた。また、中国などで古くから発酵食品製造、漢方薬に用いられてきた紅麹は、日本では沖縄県で伝統食の豆腐ようの製造などに使用されている。

麹菌の健康効果

麹菌はカビの1種ではあるが、長い食品への利用の歴史や、近年の研究からも高い安全性をもつことが裏付けられている。むしろ、麹菌を利用した伝統的な発酵食品の健康効果が広く知られており、例えば、米と麹菌で作る「糀」は抗酸化作用や抗菌物質を持つことが分かっている。日本の伝統的な飲料である甘酒も一般的に栄養価が豊富なことが知られるが、特に米麹を用いて作る麹甘酒にはビタミン類、特にビタミンB群が多く含まれ、抗酸化物質としてのエルゴチオネインや保湿成分であるグリコシルセラミド、美白作用を持つコウジ酸などが含まれている。紅麹が持つ、コレステロール降下剤として利用されるモナコリンKや血圧上昇を抑制するGABAなども注目されており、機能性食品や医薬品へ応用されている。

表1 代表的な麹菌の特徴・機能性

代表的な麹菌主な特徴・機能性
黄麹菌(Aspergillus oryzae・デンプン分解力が高い
・味噌、醤油、お酒などの製造に幅広く利用される
黒麹菌(Aspergillus luchuensis・黄麹菌と近縁種
・クエン酸を産生する能力が高い
・雑菌の繁殖を防ぐ
・疲労回復効果
白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. Kawachii・黒麹菌の変異体
・クエン酸を産生する能力が高い
・雑菌の繁殖を防ぐ
・疲労回復効果
紅麹菌(Monascus・中国では漢方薬として利用
・コレステロール降下剤として利用されるモナコリンKや血圧抑制効果があるGABAなどを含む

小林製薬研究員からひとこと

麹菌が産生する成分を機能性食品や医薬品へ応用する研究が進んでいます。モナコリンKを含む紅麹はLDL-コレステロールが高めの方において有効性を示すこともわかっています。これまでの小林製薬での複数の研究結果からも、LDL-コレステロール値(悪玉コレステロール値)の低減作用や、動脈硬化指数(LH比)改善効果などの有用性が確認されています。