バニリン酸とは
バニリン酸は、天然に存在するフェノール化合物で、さまざまな植物等に含まれており、特にバニラビーンズなどに豊富に含まれることが知られている。こうした植物等から抽出できるほか、化学的に合成することも可能で、食品や化粧品などに香料として多く用いられている。
また、バニリン酸はがん、糖尿病、肥満、神経変性疾患、心血管疾患、肝疾患に対して、関連する分子経路を阻害することにより、多様な生理活性を発揮することから、医薬品や健康補助食品としての応用も期待される。
バニリン酸の免疫・がん領域の作用・研究について
基礎研究レベルでは、いくつかの研究において抗がん作用が示されている。例えば、肺がん細胞株に対してバニリン酸ががん細胞の増殖を停止させ、またミトコンドリアを介したアポトーシスとDNA損傷を誘発することにより、抗腫瘍作用を示すことが2013年に報告されている。他にも神経膠芽腫細胞やヒト結腸がんHT-29細胞株に対して、がん細胞増殖に関わる因子やシグナル伝達経路を阻害することによる、抗がん効果が報告されている。ただし、これらは細胞株や動物試験によるものであり、バニリン酸のヒト臨床研究は現時点では見当たらない。