シリンガ酸とは
シリンガ酸は、植物の代謝によって産生される天然のフェノール化合物で、オリーブ、クルミ、カボチャ、ブドウ、アサイーなどさまざまな果物や野菜に含まれている。シリンガ酸はヒトの健康にとって有益となる抗酸化作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗内毒素作用、神経保護作用、肝保護作用などを示すことが知られており、がん、糖尿病、心血管疾患、脳血管疾患、神経変性疾患など、多くの疾患に対しての予防・治療への応用が期待されている。
シリンガ酸のがん免疫に関する作用について
シリンガ酸の抗腫瘍効果に関して、いくつかの研究から以下のような効果が示されている。
抗酸化作用による抗がん作用:
シリンガ酸は強力な抗酸化作用を持ち、細胞を酸化ストレスから保護し、DNA損傷を減少させる。DNA損傷は細胞のがん化につながるため、この抗酸化作用ががん予防に寄与することが期待される。
アポトーシス誘導:
シリンガ酸は、がん細胞におけるプログラム細胞死(アポトーシス)を誘導することが示されている。アポトーシスは、正常な細胞周期の一部であり、異常な細胞が体内で増殖するのを防ぐメカニズムである。シリンガ酸がアポトーシスを誘発することによって、がん細胞の増殖を抑制する効果が期待できる。
炎症反応の抑制:
シリンガ酸の投与により、TNF-α、IFN-γ(インターフェロンガンマ)、IL-6(インターロイキン6)といった血清中の炎症性サイトカインの濃度が低下し、免疫介在性の肝炎を抑制することが示されている。炎症はがんの発生と進行に密接に関与しており、シリンガ酸が炎症を引き起こす因子を抑制することにより、がん発生・進行を抑制する効果が期待される。
シリンガ酸の作用機序はまだ完全には解明されていないものの、今後の研究によりメカニズムに関する理解が深まることが期待される。