免疫抑制·逃避とは
がん細胞は、「腫瘍免疫」と呼ばれるがんに対する免疫監視機構によって排除されているが、それでもがんを発症することがある。その理由は、がん細胞がさまざまな方法によって、免疫の働きを抑制したり(免疫抑制)、免疫による監視をすり抜ける(免疫逃避)からとされている。
がん微小環境における免疫抑制
がんは、さまざまな正常細胞を周囲に配置させ、免疫細胞や抗がん剤などの薬剤から自分を守り、増殖や転移がしやすい環境を整えることが知られており、これを「がん微小環境(Tumor microenvironment, TME)と呼ぶ。がん細胞とその周りの間質細胞で構成されるがん微小環境では、PD-1やCTLA-4などの免疫チェックポイント分子による負のシグナル伝達やTGF-β、IL-10といった抑制性のサイトカイン、制御性T細胞(Treg)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)などが作用して、免疫抑制環境を形成しており、免疫ががんを排除する本来の働きを行えない状態が作られている。
がん治療において、こうしたがん微小環境を制御することが治療効果を高めるために重要であるとの認識から、現在さまざまな研究が行われている。
免疫逃避機構
がん細胞が免疫監視機構を回避する方法のひとつには、がん抗原の発現を低下させたり消失させたりすることで、獲得免疫におけるT細胞によるがん細胞の認識を避け、免疫監視機構から逃避している(免疫逃避)と考えられている。免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法の効果がなくなるメカニズムの一つと考えられている。
【図】がん微小環境における免疫抑制