研究用語辞典

β-グルカン(ベータグルカン)

本サイトで掲載している情報は、一般的な素材にも含まれる成分に関する学術研究成果です。特定の製品・食品の効果を保証するものではありません。本研究成果も限られた条件下での成果であり、特定の製品・食品を摂っても、同じ効果が得られるというものではありません。

β-グルカン(ベータグルカン)とは

β-グルカンは、細菌や真菌(酵母、キノコなどの菌類など)の細胞壁内に存在する多糖類の一種。グルコース(ブドウ糖)が化学的に結合して長く連なった多糖類をグルカン(glucan)と呼び、その化学的構造からα型(α-グルカン)とβ型(β-グルカン)の2種類がある。

α-グルカンはいわゆる糖質・でんぷんとして体内に吸収される一方、β-グルカンは消化・吸収されず、腸に存在する免疫担当細胞に働きかけて免疫応答を活性化し、体の防御機能を強化すると考えられている。また、コレステロールの吸収を抑制して血中コレステロール値を低下させる作用も認められており、疾患予防や治療のための医薬品や健康食品、サプリメントとして研究が行われている。

β-グルカン(ベータグルカン)の免疫・がん領域の作用・研究について

β-グルカンの免疫調整機能が注目され、その抗がん効果についてこれまで活発な研究が行われてきた。β-グルカンは基礎研究において抗腫瘍免疫応答を増強することが認められており、免疫担当細胞のマクロファージを刺激してTNF-α(腫瘍壊死因子-α)やIL-10(インターロイキン10)といったサイトカインの産生を促すことが知られている。

さらに医薬品レベルでの開発も盛んにおこなわれ、スエヒロタケ由来のシゾフィラン(Schizophyllan)とシイタケ由来のレンチナン(Lentinan)は、それぞれ子宮頸がん、胃がんに対して、β-1,3-グルカンにβ-1,6-側鎖を有するβ-1,3-1,6-グルカンを主成分とする抗がん薬として承認、製造販売されていた。

β-グルカンにはその長さと分岐構造によりいくつかの種類が存在し、構造の複雑度が高いほど、免疫調節作用や抗がん作用が強まることが示唆されている。キノコ類に多いβ-1,3結合やβ-1,6結合のグルカンに高い抗腫瘍作用があるとされる。

※シゾフィラン、レンチナンは2018年3月に販売を終了。

参考文献

小林製薬研究員からひとこと

小林製薬では長年に渡りシイタケ菌糸体抽出物の研究を続けて参りました。β-グルカンを主成分とするシイタケ子実体由来のレンチナンが抗がん薬として承認されたことなどから、シイタケ菌糸体の免疫機能改善効果に着目して、がん免疫へ応用する研究が数多く行われています。全国10以上の大学等研究機関が参加して、実際のがん患者に対する効果を検証する複数の臨床研究が実施されています。