紅麹①:血中脂質・コレステロールに関する研究
4.血液粘度低減作用
【研究4】脂質が原因で生じる血液粘度上昇の抑制効果
概要
一般的に、高脂肪食、高コレステロール食を継続して摂取すると、脂質の運び役であるカイロミクロンやVLDL(超低密度LDL)濃度が高く維持され、血液の粘度が上昇、いわゆるドロドロ状態になることで動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞など循環器系疾患の発症リスクを高めることが知られています。一方、高脂血症治療薬であるエゼチミブやロスバスタチンの投与により、血液の粘度が低下するという報告があることから、同様にコレステロール合成抑制作用を持つ紅麹にも血液粘度を改善する作用が期待されます。
そこで、高コレステロール血症に伴う血漿粘度上昇に対する紅麹摂取の影響を検討するため、健康な日本白色ウサギに12週にわたり高コレステロール食と紅麹を同時に投与したところ、カイロミクロンコレステロール及びVLDLコレステロールの血漿中濃度と粘度の上昇が明らかに抑制されました。このことから、紅麹は、脂質が原因で生じる血漿粘度の上昇を抑制することで、血管系の疾患の予防効果を有する可能性が示唆されました。
試験方法
項目 | 内容 |
対象 | 日本白色ウサギ雄14週齢(普通食群 n=2、コレステロール負荷食群 各n=7) |
試験品 | 紅麹粉末:3P-D20(小林製薬バリューサポート株式会社製紅麹) |
方法 | 普通食にて3日間順化を行ったウサギを準備。「普通食群(1群)」と「コレステロール負荷食群(2群、3群)」に割付け、3群には“紅麹粉末”を500㎎/kgとなるよう12週間、強制経口投与を行った。0、4、8、12週目に各群より血液を採取し(採血前12時間は絶食とする)、血漿の生化学検査、コーンプレート型粘度計 Thermo Fisher Sientific RheoStress 600による粘度測定(温度:27℃、Shear rate:1000 1/s)を行った。 |
試験スケジュール | 12週間 |
飼育 | 個飼い |
餌・水 | 餌:制限給餌、水:自由摂取 |
測定項目 | 血液(T-Cho、LDL-C、HDL-C、TG、脂質代謝成分分析)、血漿粘度測定 |
結果
血漿の生化学的検査では、「紅麹投与群(3群)」に統計的な有意差をもってT-CHO(総コレステロール)およびLDLコレステロール、カイロミクロンコレステロール、VLDLコレステロールの上昇が抑制されました。血漿粘度は、8週、12週目において紅麹投与群と対照群で統計的な有意差が認められました。
考察
紅麹投与による、VLDL抑制効果は、紅麹中のモナコリンKが肝臓におけるコレステロール合成を阻害し肝臓からのVLDLの放出を抑制したことによるものと考えられます。一方で、同様のメカニズムでは説明できないカイロミクロンの抑制効果は、紅麹中の何らかの成分がカイロミクロンのクリアランスを向上したことによるものと考えられました。紅麹は、血中での大型のリポ蛋白を抑制することで血漿粘度の上昇を抑制すると考えられます。紅麹は、脂質が原因で生じる血漿粘度の上昇を抑制することで、血管系の疾患の予防効果を有する可能性が示唆されました。
発表先
【学会発表, 口頭】浅野幸一,紅麹のウサギ血漿粘度改善効果, 第5回 発酵と酵素の機能性食品研究会, 2021/7/4.
【論文(査読アリ)報告】H. Fukami et al. (2021). A Review of Red Yeast Rice, a Traditional Fermented Food in Japan and East Asia: its Characteristic Ingredients and Application in the Maintenance and Improvement of Health in Lipid Metabolism and the Circulatory System. Molecules, 26(6), 1619.
学術情報
①血中脂質・コレステロールに関する研究
②薬理と成分に関する研究
③安全性に関する研究
④美味しさに関する研究
研究素材の紹介
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