研究用語辞典

免疫バランス:IFN-γ/IL-10の産生比(がん患者における免疫のバランスの指標)

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免疫細胞から産生されるサイトカインであるIFN-γ(インターフェロンガンマ)とIL-10(インターロイキン10)の産生されるバランス(免疫バランス)を示した指標。

私たちの体に備わった免疫システムは、細菌やウイルス、体内で発生したがん細胞など体に害を与える異物を攻撃・排除して体を守っているが、この免疫系が過剰に働くと、本来攻撃すべきでない正常な組織や細胞を誤って攻撃し、自己免疫疾患やアレルギー疾患を発症してしまうことがある。そこで、免疫の過剰な働きを抑えるために、「免疫抑制」と呼ばれる仕組みが備わっている。免疫が正しく働くためには、免疫の攻撃と抑制のバランス(免疫バランス)が取れていることが重要となる。

IFN-γ(インターフェロンガンマ)は、NK細胞の活性化、また獲得免疫の成立にも寄与することで、がん細胞の排除の中心的役割を担う細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化するサイトカインとされ、がんに対する免疫反応(免疫応答)に重要な役割を果たしている。一般的にIFN-γの数値が大きくなると、免疫による抗がん作用が高まると考えられる。

一方、IL-10(インターロイキン10)は、IFN-γなどの炎症系サイトカインの産生を抑制し、免疫細胞の働きを抑制する制御性T細胞(Treg)の分化・増殖の促進などにより、T細胞の増殖や活性化にブレーキをかける抑制性サイトカインであり、IL-10の数値が大きくなると、免疫の働きにブレーキがかかりすぎてしまうと考えられる。

IFN-γ/IL-10の産生比は、がん治療時において、患者体内の免疫の攻撃と抑制のバランス状態(免疫バランス)を見る指標として有用と考えられる。

参考文献

小林製薬研究員からひとこと

がん細胞は、制御性T細胞(Treg)などを利用して、自身の身を守る免疫抑制環境を作ることが知られており、免疫バランスが抑制方向に傾いていることが少なくありません。そこでIFN-γ/IL-10の産生比(免疫バランス)を改善して、免疫ががん細胞を攻撃できる環境を作ることが、治療戦略として重要と考えられます。小林製薬では長年に渡りシイタケ菌糸体抽出物の研究を続けて参りました。がん患者に対するシイタケ菌糸体抽出物の有効性を調べたいくつかの研究では、がん患者がシイタケ菌糸体抽出物を摂取することで、IFN-γ/IL-10の産生比が上昇し、免疫の攻撃と抑制のバランス(免疫バランス)が改善されるという結果が示されています。